箱根山展望台から望む東洋のナポリ・陸前高田の風景を案内する新沼岳志さん(写真中央)

 

市役所で地震にあう

震災当日、地震時は確定申告のため市役所にいた。
普通ではない揺れを感じ、家屋診断で大地震が起きた場合は危ないと言われていた昔から続く自宅が心配になりすぐに車で戻った。家族が崩れた家の下敷きになってはいないか心配だったが、高台にある自宅は何事もなく、家族も無事だった。

 

旅行好きが講じて観光ガイドへ

旅行が好きで、学生時代は当時流行した大きなリュックサックを背負った「カニ族」となり、国鉄の周遊券を片手に北海道から九州まで日本中を回った。
会社務めをしてからは、休日の度に車にテントを積んで家族と出かけ、関東以北は全て旅してきた。会社務めを終えた後は、陸前高田市の観光ガイドを務めている。陸前高田観光ガイド部会の初代会長で、9年目に入る現在も会長を務めている。
何よりガイドをしていてうれしいのは、いらしたお客様が帰った後に陸前高田の良いところを宣伝してくださること。名古屋や九州など遠方のマスコミ関係の方も好意的に取り上げていただいている。

 

被災した建物の保存を

一方で、正直なところ陸前高田のこれからが心配。
ガイドの仕事は、震災直後の今がピークで忙しいが、震災から時間が経つにつれ観光客も少なくなり、仕事も少なくなってくるだろう。
そのためにも、行政には広島にある原爆ドームのように物を言わない語り部、シンボルとしてできるだけ被災した建物を残してほしい。震災メモリアル公園の敷地内となる道の駅やユースホステルは残そうとしているが、それ以外の建物も目に見える形で残してほしい。震災を伝えるものが何も残っていないと陸前高田に人は来ない、そんなに甘くない。
例えば、イタリアのポンペイでは、火山による噴火で被災した町が残っている。また、カンボジアでは内戦で亡くなった方々の遺骨が街にそのままに残っているところがある。心が痛むが、これらが未来への教訓となっている。
しかし、三陸では過去に、明治29年と昭和8年の三陸沖地震津波、昭和35年のチリ地震津波を受けたが、被災した建物は何も残っていない。日本人は歴史を残さず取り払ってきているように思える。ガイドをしていて感じるが、言葉だけで当時の状況を伝えるのは難しい、伝える力が弱い。物として何も残っていないといくら口で説明しても人間は実感がわかない。被災した建物をできるだけ残し、そして、被災した建物を見て、震災を忘れないでほしい。震災を常に思い出してほしい。
今回の震災で何万人と学者の方が三陸に来ているだろう。正直なところ、被災者同士では言いづらいこともあるので、学者の方も、建物を残すようにもっともっとご意見を述べていただきたい。

 

陸前高田の将来像

将来の陸前高田を考えると、大胆な発想が必要となるかもしれない。
例えば、被災し残った広大な土地をサッカーやラグビーなどの練習場にして、スポーツ合宿所のメッカとしてみてはいかがだろうか。建設費がかかるスタンド付きの競技場はいらない。練習場だけでいい。そうすれば、選手の食事を提供するレストランなどの観光分野だけでなく食材を提供する農業まで幅広く雇用を生むだろう。あらゆる面で波及効果が期待できる。
陸前高田の将来を考えれば、震災の悲惨さから立ち直る意味でも、このような大胆な発想を英断するリーダーシップがある人が必要だ。例えば、大阪市長や東京都知事のような。
また、陸前高田の復興のためには資金力がある大企業による協力も必要に感じる。そうすれば、復興の進みが増すことだろう。そして、その際に地元の孫請け企業にもきちんと利益が残る仕組みになるよう、行政には法整備の面で期待したい。
震災により市外に一時避難した方や仕事を求めて都会に出て行った若者が陸前高田に戻って来るまで、このような観光による復興を行い、交流人口を増やしていくしかない。観光による復興が実現すれば、一時避難した方や若者も戻ってくることだろう。

 

ガイドの地位向上を

ガイドをしていてつくづく感じるが、観光ガイドは非常に身分が低い。このままでは、職業として定着しない。雇用として定着し職業として安定するように、そして陸前高田の産業となるようにガイドの地位向上を図らないといけない。外国は特殊技能者であるガイドの身分は高いが、日本はまだまだ低い。
そのため、ガイドの質の向上を図っている。例えば、ガイド採用時は震災ガイドだけでなく、観光ガイドもできる方を採用している。震災後は、観光のみのガイドの仕事は全くなく100%震災ガイドになったが、震災ガイドだけではお客様はものたりなく感じ、またガイド中の時間も持たないため、観光ガイドもできる方を採用している。このように採用には気を配っているため、少数精鋭でやっている。高田では40代から70代の5人でガイドをまわしている。
その他にも、世界遺産・平泉のガイドを基準にガイドの育成・養成に努め、ガイドの質を高める取り組みを行い、ボランティアガイドとして無料だった料金を、2000円、3000円とあげてきた。
今後は、岩手県の最高レベルのガイドをめざしていきたい。

 

陸前高田を東洋のナポリに

陸前高田には、世界三大漁場の三陸沖、風光明媚なリアス式海岸など世界に誇れる観光資源があります。
また、世界遺産に指定された平泉に金を搬出した金山の跡があります。
さらに、陸前高田は、山、川、海に恵まれています。特に海の幸は、ホタテ、カキ、ワカメ、ウニ、アワビなど豊富です。そして、陸前高田を一望できる箱根山からの眺めはまさしく東洋のナポリを思わせる景色です。風景の万華鏡を見ることができます。わたしは、大好きな陸前高田を東洋のナポリにしたいと思っています。
ぜひ、陸前高田にいらしてください。そして、陸前高田の応援団になってください。

 

(2012年7月インタビュー)

 

「東洋のナポリ・陸前高田へぜひいらしてください」と語る新沼岳志さん

 

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 ・陸前高田観光ガイド