(今回は、季節の風物詩ということで、12月21日(金)に岩手県宮古市にある岩手県立水産科学館「ウォリヤス」で開催されました三陸特産の鮭塩漬干物「新巻きザケ作り」の体験レポートをお届けいたします。)

 

(写真:新巻鮭作りを指導する岩手県立水産科学館「ウォリヤス」館長 伊藤隆司さん。写真左から二番目の方。)

 

■岩手県立水産科学館ウォリヤス「新巻きザケ作り体験」(岩手県宮古市)

本日ご指導くださった方:新巻鮭づくりの名人でもある岩手県立水産科学館「ウォリヤス」館長 伊藤隆司さん。

体験会では、先に館内で鮭について伊藤館長より様々なお話をお伺いした後、館外にて伊藤館長のご指導及び同科学館スタッフのサポートのもと新巻鮭作りに入りました。

(以下、館長 伊藤隆司さんのお話し)

 

■本州一の水揚げを誇る鮭の産地・岩手県宮古市

岩手県立水産科学館がある岩手県宮古市は、鮭の水揚げ本州一です。

市内で鮭が採れる主な川は、田老川、閉伊川、津軽石川で、特に津軽石川は地形的にも優れ全国的に有名です。

 

■今年は鮭が不漁。原因は?

(写真:今朝宮古市で水揚げされたばかりの鮭で新巻作りを行うが、今年は鮭が不漁。)

今年は鮭が不漁です。

通常この時期は毎朝25,000本ほど水揚げされますが、今朝はたったの2,000本ほどで、十分の一以下です。

当然、値段は上がっていますし、魚体も小さいです。

また、雌鮭が少なく、イクラの価格もあがっています。

イクラは、一キログラムで7,500円から8,000円ほどします。

さらに、鮭だけではなく今年はサンマも不漁でした。

鮭の不漁の原因は、昨年発生した津波によるものではないようですが、はっきりとはわかっていません。

恐らくは、4年前の稚魚放流のさいに水温が高くて稚魚が生きていけなかったか、もしくは、稚魚を放流する数が適正ではなかったのかが原因かもしれません。

 

■鮭は頭も食べることができる

鮭は頭から尻尾まで食べることが出来ると言われていますが、通常食べる部分は限られています。

地元でもエラや腸などは殆どの方が食べません。

一方で、新巻の頭は煮物に使えます。

頭上部から二つに切ったものを鍋の底に並べ、その上に具材をのせ煮込みます。

しばらく煮込むと、硬い頭が柔らかくなり食べやすくなります。

骨や歯まで食べることができるまで柔らかくなります。

また、臓物の心臓や白子も煮物にして食べることができます。

心臓はレバーのような食感です。

白子は焼いて冷凍保存して季節をずらし春先に煮物にして食べると食べ飽きません。

 

■名人が教える新巻きサケを上手に作るコツとは?

(写真:新巻鮭づくり名人の館長 伊藤隆司さんの手さばき)

それでは、早速、新巻き鮭作り体験に入りたいと思います。

今日は、今朝、宮古市で水揚げされたばかりの、表面にブナの木に似た模様のブナケという種類の雄鮭を使います。

これは鱗が輝くギンザケに対しヌメリがあるのが特徴です。

新巻きサケを上手に作るコツはなんといっても「自分が作る新巻鮭が一番おいしい」と思って作ることです。

先入観をもってやることです。

わたしはいつもそういう気持ちで作っています。

まず最初に、えらの除去、腹開き、内臓除去(メフン、白子等)などの「生処理」を行います。

今日は、家庭にはない専用の刃物、道具を用意いたしました。

家庭で行うさいメフン除去は大きめのスプーンを使用してください。

「生処理」が終わったら、次に、血液を洗い流す「水洗い」、そして、「塩漬け」を行います。

魚にある水分を引き出す成分がある塩は、ご家庭で使う精製塩ではなく、岩塩などミネラル成分が豊富なものを使用して仕上げます。

 

■三陸の冷たい冬風が旨い新巻鮭を作る

(写真:新巻さけ造りに挑戦する参加者の方々)

今日皆さんが行っている新巻鮭つくりは、冬のこの時期がもっとも好都合なのです。

寒い風が塩漬けした鮭を乾かすのに最適で身が引き締まり、また、日差しも丁度良いのです。

今日の作業は、ここまでですが、この後は、今日作った新巻鮭を自宅に持ち帰り、1週間程漬け込み、その後、塩を軽く洗い真水に1晩ほど付け、きれいにヌメリ等を洗ってから昼間干して夜は寝かせる天日干しを1週間から10日ほどで新巻鮭の完成です。

この天日干しの作業を繰り返しすことで、干せば干すほど旨み成分のアミノ酸が増えておいしい新巻鮭ができます。

天日干しを行うさいは、気温が下がって凍らせると味は落ちますので気を付けてください。

また、カラスや猫に食べられないように気を付けてください。

専用の網があるといいでしょう。

干している鮭にカビが生えたら、お酒で拭き取って下さい。

カビが綺麗に取れます。

今回学ばれた新巻鮭造りをご家庭で行う場合は、台所やお風呂で作らない方がいいでしょう。

鮭の身体についたゴミなどが排水溝につまる場合があります。

台所やお風呂よりも、広いところに段ボールを敷き、その上に新聞紙を敷いて、作業を行った方がよいでしょう。

その方が、使った段ボールと新聞紙をそのままゴミに捨てればよいので後片付けも楽です。

ぜひ、今回学ばれたことを活かして、ぜひご自宅でも三陸の冬の風物詩「新巻きザケ作り」を楽しんでみてください。

 

▼ホームページ

岩手県立水産科学館「ウォリヤス」(公式ページ)
「いわて三陸観光復興プラットフォーム」-観光施設(関連ページ)

●岩手県立水産科学館「ウォリヤス」平成24年度年末年始の営業について

12/28(土)~1/4(金)まで休業。但し、元旦のみ特別営業 9:00~12:00。(みやこ浄土ヶ浜遊覧船「初日の出洋上遥拝クルージング」の後にお楽しみいただけます。)

住所:〒027-0001岩手県宮古市日立浜町32番28号
電話:0193-63-5353
展示内容:全国初の水産専門の科学館で、三陸沿岸域に生息する魚介類の水槽展示のほか、岩手の漁業の歴史や漁村の伝統文化を伝える資料約1,500点が展示されている。

 


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※編集後記:このように岩手県宮古市では、「新巻鮭作り」という昔から続く地域文化を伝える活動が震災前と変わらずに行われています。ご指導いただいた岩手県立水産科学館の館長の伊藤さんを始めスタッフの方々の精力的なお姿に復興に向けて頑張っていらっしゃることを感じました。
ところで、本日体験会でのお話を伺って疑問に思った「鮭の雄と雌で味が違うのか」を館長の伊藤さん聞いてみました。科学的な見解はその結果に譲るとして、感覚的には雄と雌で味の差はほとんどないそうです。雌の方がイクラを取り出した分、お腹の当たりの皮がたるむなど見栄えが悪いですが、味には差はないそうです。しかし、昔は、イクラを取った雌鮭は、イクラに栄養が行き身の方は味が良くないという先入観があり、イクラを取った雌鮭は、無料で配るか捨てていたそうです。ご参考まで。