震災直後は、地域の住民の方のためのスーパーとしての役割も担った「碁石海岸レストハウス」

 

震災当時、売店はパニック状態

震災当日は、碁石海岸レストハウスにて勤務中。

訪れた地元の子供たちを見送るために一階にある売店にいた。

地震発生後、そんなに揺れが大きいと思わなかったので館内にいたが、危険を感じたお客さんに促されるまま外に出た。

そして、急いで父に電話をした。震災直後ということもあってか、運よく父と電話がつながり、お互いの無事を確認しあった。

まもなくして、海の近くにある民宿のバスが碁石海岸レストハウスに避難してきた。

下にある喫茶店が流されたというのを聞かされる。

その後、勤務していた売店は、100人ほどのお客様が食料を買い求めパニック状態に。

みんな冷静でなかった。あるお客様は、周りの方のことを考えずにペットボトルの飲料水を一人で20本も買っていった。

正直なところ、今求められることは何なのかを考え、どうすればみんなに水が行き渡るかを考えて欲しかった。

しかし、今思うと、飲料水は一人一本にお願いするなど自分の方でも工夫するべきだったと反省している。

 

みんなで励ましあいながら一夜を明かす

地震や津波で、電柱倒れたり、船が道路まで入るなどして道路が不通となり、とても自宅に帰れる状態ではなかったので、結局、震災当日は、一晩を勤務している碁石海岸レストハウスで明かした。

夜は停電で真っ暗な中、みんなで励ましあいながらラジオで各地の情報を聞いた。

まだ余震が頻繁にあり、ちょっとの揺れでも外に出たりしながら不安な気持ちで一晩を明かした。

 

家族のきずな、温かさ

翌朝、地震で倒壊した家の屋根を歩いて乗り越えながら、碁石海岸レストハウスの売上金をもって3時間ほど歩いて社長宅をめざした。

社長に指示を仰ぎに伺ったが、結局社長には会えず、その後、自宅に帰った。

自宅は、母の実家でもあり、わたしは祖母と暮らしていた。

祖母は無事だった。

そして、次の日、遠野市に住む母がすぐに会いに来てくれた。

母の顔を見たときにポロっと涙が出た。

母が来てくれたのがうれしかった。

みえない力でつながっている親子の命のつながりを感じた。

心配してかけつけてくれた家族の温かさを感じた。「生まれてよかった」とさえ思った。

家族は一番大事であることを痛感した。

家族、親戚はみんな無事だった。

 

再オープンに向けて動き出す

その後、碁石海岸レストハウスでは、防犯のため、商品を社長の自宅に移動した。

そのため、商品は無事だったが、あいにく、ホームタンクの灯油は全部抜かれていた。

碁石海岸レストハウスの再オープンをめざし、館内の片付けから始め、窓を拭き、食器を一枚一枚殺菌するなどした。

電気は震災から一週間後に復旧。

しかし、レストランがある2階の水が出なかったので、大きな給水タンクを用意して急場をしのいだ。

震災から一か月ほどたった4月下旬に碁石海岸レストハウスは仮オープンし、5月のゴールデンウィーク明けには、本格的に再オープンした。

再オープンの当初は、観光客向けの土産品の他に、地域の住民の方のためにラップなどの日配品を取り扱うなど、地域の方のスーパーとしても機能した。

 

震災は、忘れてはならない、未来に伝えていくべきこと

震災前より、大船渡の観光振興のために社長が立ち上げた観光ガイドも勤めていた。

震災後は語り部ガイドを行っている。震災前後の写真を使って、碁石海岸を案内している。

時には、観光バスに添乗し、隣りにある陸前高田市も案内をする。

この夏は、月に10~20本、土日はほぼ全て予約が入っている。

自分が体験したり、他人から聞いたりしたことをお客様へ伝えている。

震災ガイドを通じて、支援してくださる方の心の温かさを感じた。

大船渡に縁もゆかりもない方々がわたしたちを励ましに遠くからやって来てくれる。

人と人の絆、助け合いの精神を学んだ。

人間は素晴らしい。

震災をいかに未来に伝えていくか、語り部ガイドはその役割を担っている。

震災は、忘れてはならない、未来に伝えていくべきこと。

震災ガイドは、恐ろしい津波の話、誰かが亡くなった話などをするので精神的につらい。

できれば思い出したくないけれど、伝えないといけない。

嫌でも思い出して話さないといけない。

未来に残していかないと、もし他のところで地震あった時にその教訓がいかされない。

 

大船渡市民の代表のつもりでガイド

語り部ガイドを行うさいに心掛けているのは、社長の教えどおり、いつも大船渡市民の代表のつもりでガイドをしている。

なぜなら、お客様は、ガイドを個人の人間としてではなく、大船渡の人間として捉えるからだ。

だから、大船渡に一人でも多くまた行きたいと思ってもらえるように、心からお客様をおもてなししたい。

そして、お客様が帰られたときに良いお土産話ができればいいと思っている。

 

大切な人をなくさないように守ってあげてほしい

語り部ガイドを行っていると、時折、涙を流すお客様がいらっしゃる。

私たちのことを本当に考えてくれると思うと胸が熱くなった。

真剣に聞いてくださるからこそ、お客様に同じ目にあってほしくない。

悲しい思いをしてほしくない。

人が亡くなるのはとても悲しいことだから。

もし、震災が起こったときは、大切な人をなくさないように守ってあげてほしい。

 (2012年7月インタビュー)

 

 震災の被害を免れた「碁石海岸穴通磯」

 

▼関連リンク

碁石海岸レストハウス